自分の誕生日なんて、考えもしなかった。
birthday of thanatos 前編
俺がこの城に来てから、今日が丁度1年目だった。
――――――――身長は少しだけ伸びた。みんなには今の時期は伸びにくい、と言われる。
――――――――勉強は、少しだけキメラに教えてもらって、少しだけできるようになった。
――――――――デュエルは、長をのぞいて俺よりも強い奴はもういなかった。
――――――――俺の歳は、今年で12歳だ。だけど、誕生日を知らない。
昔、街を放浪しているとハッピーバースデーの歌を歌って、生まれた日を祝っている家を視たことがあったが、
物心ついた時から盗みを働いて一人で生きてきた自分にとって誕生日なんか無縁だった。
誕生日があって、誰か喜んでくれた事もなかったし、
誕生日があって、自分にとって良い事はなかった。
自分には誕生日なんかあってもなくても同じような世界を生きぬいてきた。
だから、誕生日がないことに、なにか違和感を感じたことすらなかった。
だが、最近になって何故かそれに違和感を感じてきていた。
仲間達の中では、「誕生石」や「星座」などの昔からよくある占いが流行っていた。
自分にも誕生日は何月何日、と聞かれた。だが、「知らない」とただ一言返していた。
正直、そんなことを何度も何度も聞かれているとうんざりしてくる。
だが、それ以上に自分に誕生日がないことに、何か空しさを感じていた。
そんな事を考えていると、気分が沈んでいき、もうこの事を深く考えるのはやめよう、とそこで思考を停止した。
気分転換に、仲間とデュエルしようと誘うが、みんな断ってあわててどこかへ行ってしまう。
理由を聞いても黙って行って、一人になった。
すると、頭の中で城に住む前の自分の視ていた光景がフラッシュバックした。
大雨の降る中を盗んだ物を持って逃げ回り、大人に捕まり、腹を蹴られ、金属バットで血を吐くほど殴られ、
それでも盗んだ物を返そうとせず、呆れた大人が帰っていく。盗んだ物を食べようと思っても、
口の中は切れて痛くて食べられなかった。つらくて、つらくて仕方がなかった。
こんな事をあと何千回、何万回続ければいいのだろう。何度死にたいと思ったことか。
今の楽しい時間が、奪われそうな感じがして、いきなり不安と恐怖心が襲って来たのだ。
誰か!誰か!誰でもいいからいないのかよ!
怖くなって走り出し、仲間を捜したが、影すら見あたらなかった。
どれだけ探しても見つからず、とうとう泣き出しそうになり、壁にもたれかかり熱くなった目蓋を隠すように手をそえた。
ガチャリ・・・、凶死朗のもたれかかっている壁の隣の扉が開きその暗い闇の中から手が出て、凶死朗の腕を掴み、
闇の中に引きずり込む。驚いて声にならない叫びを発するが、当然誰も助けてくれる筈はなかった。
抵抗しようとしたその瞬間、パァン、パァンとクラッカーの音がなり、照明がついた。
「誕生日、おめでとう凶死朗!!!」
仲間全員がそこにいて、テーブルには豪華な食事が並べられていた。
凶死朗はビックリして涙がひっこみ、呆然としていた。
「凶死朗、今日はお前の誕生日だよ」
「誕生日・・・?」
「そうさ、今日のためにお前に気づかれずに用意するのは大変だったよ」
「だけど、俺の誕生日がいつかなんて・・・」
「確かに、あんたの本当の誕生日は知らないけども、丁度1年前、お前が私たちの家族になった日。その日がお前の誕生日ってのはどうだい?」
「俺の誕生日・・・嬉しい」
「喜んでくれて良かったよ、さあ、ジャンジャン食べて飲みなよ!」
2月13日、その日が誕生日になった最初で最後の日
前後編だけど、別々でも楽しめます。
ちなみに2月13日誕生日設定はイヴにしたかったのですが、白さんがその辺りで諦めました。